大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和28年(う)1594号 判決

被告人 和田一 外

〔抄 録〕

論旨一及び二について。

原判決がその判示第一の(一)の事実を認定する証拠として挙示した被告人甲の検察官に対する第三回供述調書によれば、「私は自腹を切つてやるつもりでA、B、Cの三人を呼んでXの応援を頼むと依頼し、その応援をねぎらう為に御馳走致しました」とあるのであつて、原判決は右の供述により被告人甲が単独で饗応したものと認定したと解される。しかしながら、他方Cは原審において証人として、「久しく飲み合わないから一杯やろうと甲に話したところ、同人はそれに賛成して何処でやろうというので、私は昼間なら私方でやつても良いがと云つたところ甲は都合が悪いと云うので貴方の処でやろうと云い、結局甲宅でやる事になつたのです」と供述しており、被告人甲も同じく原審公廷で「然し当時相談もしたので二人でやつた様な形になると思います」と述べ、さらに「Cから話があり同人方でやるのは都合が悪いというので私方でやつたのです」とも述べ、「あらかじめどの程度の料理をしてくれと云われたか」との問に対し「云われません」と答えているのであつて、被告人甲とCとの間にかくのごとく饗応に関し相談があつたことは、記録に現われた当時の情況に照らしむしろ真相に合するものと認められるし、また後日Cが同被告人にその費用として金三、〇〇〇円を交付したこととも符合するのである。はたして然らば右の饗応は被告人甲とCが共謀の上これをしたものと認むべきであり(右のような事実関係の下においては、被告人甲が単に饗応を幇助したにすぎぬものとは認められない。従つて同被告人が従犯であるとの所論は採用の限りでない。)いやしくも共謀があつた以上その費用を被告人甲一人が負担するつもりであつたとしても共同正犯の成立を妨げるものではないから、これを被告人甲の単独犯行であるとしCを被饗応者の中に加えた原判決にはこの点において事実の誤認があるといわなければならない。しかしながら、共同正犯であるべきものを単独犯と誤認したからといつて、これに対する刑罰法規の構成要件上の評価は畢竟同一に帰するのであるし、ことに本件の事実関係においては共同正犯であると単独犯であるとによつて被告人甲の情状に格段の変化があるとも考えられないからその面において右の誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないし、また選挙に関する饗応の罪は被饗応者の数のいかんにかかわらず単独一罪をなすものと解すべきであるから(大正四年五月二五日大審院判決、判決録二一輯六七五頁参照)、被饗応者が三名であつたか二名であつたかということも判決に影響を及ぼすことの明らかなことがらであるとはいえない。従つて前記の事実誤認は原判決を破棄する理由とはならないので、論旨は結局において理由がない。

註 本件は公職選挙法第二五二条第一項の適用の有無の点(量刑不当に帰する)で破棄。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!